はじめに
医療画像管理システム(PACS)は、病院やクリニックにおける重要な技術です。近年、「クラウドPACS」がその初期費用の安さや手軽さを理由に人気を集めています。一方で、「オンプレミスPACS」には長期的な安定性やセキュリティ面での強みがあります。本記事では、日本市場におけるPACS導入時のコスト構造を徹底比較し、最適な選択肢を見つけるヒントをお届けします。
クラウドPACSの特徴と課題
初期費用と利用コスト
「クラウドPACS」は、初期費用が100万~200万円と比較的低く、月額料金は1TBあたり5万円からスタートします。この手軽さが多くの病院やクリニックに支持されている理由です。
データ容量の課金構造
一方で、「クラウドPACS」ではデータ容量に応じた従量課金が発生する点が課題です。たとえば、1年で1TBのデータを使用するクリニックでは、2年目には2TBに増加し月額費用が10万円、7年後には月額費用が35万円に達する可能性があります。
オンプレミスPACSの利点とコスト
初期費用と月額費用
「オンプレミスPACS」は、初期費用が300万~500万円と高めですが、月額コストは2万円程度で安定しています。データ量が増えても追加料金が発生しない点が最大の利点です。
セキュリティと柔軟性
- セキュリティ性: 自社内でデータを管理でき、クラウド型に比べセキュリティリスクが低い。
- 柔軟性: 病院やクリニックのニーズに応じたカスタマイズが可能。
医用データ量と長期的なコストの比較
クラウドPACSの費用増加
1TBのデータ量を使用する場合、以下のように毎年の費用が増加します。
- 1年後: 月額5万円(年間60万円)
- 7年後: 月額35万円(年間420万円)
累計費用は、初期費用を含め1320万~1420万円に達する見込みです。
オンプレミスPACSのコスト安定性
「オンプレミスPACS」では、月額費用が2万円に抑えられるため、7年間の累計費用は約444万~668万円に収まります。
コスト比較シミュレーション
時間経過 | クラウドPACS コスト | オンプレミス型PACS コスト |
初期費用 | 100万~200万円 | 300万~500万円 |
月額コスト(1TB 使用時) | 5万円 | 2万円(維持管理費用のみ) |
1年後 | 60万円(5万円×12か月、1TB使用) | 24万円(2万円×12か月) |
7年後 | 420万円(35万円×12か月、計7TB使用) | 168万円(2万円×84か月) |
累計費用 | 初期費用+年間コスト合計 = 1320万~1420万円 | 初期費用+年間コスト合計 = 444万~668万円 |
まとめ
PACS導入において、「クラウドPACS」と「オンプレミスPACS」にはそれぞれメリットと課題があります。短期的な導入コストを抑えたい場合はクラウドPACSが魅力的ですが、長期的な安定性とコストパフォーマンスを重視する場合はオンプレミスPACSが優位です。医療施設の規模やデータ増加ペースに基づいて、病院やクリニックにとって最適な選択肢を見極めましょう。