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PACSのデータ保存方式とは?最適な保存方法を徹底解説

公開日:2024/12/02

医療現場におけるデータ管理は、診断の精度向上や業務効率化に不可欠です。本記事では、PACS (Picture Archiving and Communication System) を活用したデータ保存方式について、基本から最適な方法まで詳しく解説します。

PACSとは何か

PACSの基本的な役割

PACS(Picture Archiving and Communication System)は、医療画像の保存、管理、共有、閲覧を行うためのシステムです。レントゲン写真やCTスキャン、MRI画像など、多くの医療画像が日々生成される医療現場では、これらのデータをデジタル化し、安全に保存・管理することが求められます。PACSを導入することで、医療従事者はいつでもどこでも画像情報に迅速にアクセスでき、効率的に診療が進められます。

PACSの歴史と進化

PACSは1980年代にデジタル画像処理技術の発展とともに登場しました。当初は、フィルムをデジタル化して保存するためのシステムでしたが、ネットワーク技術やコンピュータ性能の向上により、現在では画像診断や遠隔診療など、幅広い機能を備えています。

異なるPACSアーキテクチャ

PACSのデータ保存方式には、クラウド型オンプレミス型の2つの主要なアーキテクチャがあります。クラウド型PACSは、画像データの保存・処理をクラウドサービスに委託する方式で、低コスト・高拡張性が特徴です。一方、オンプレミス型PACSは、自社のサーバーやストレージに画像データを保存するため、セキュリティ要件が高い場合に適しています。どちらを選ぶかは、病院の規模や予算、セキュリティ要件に応じて判断する必要があります。

PACSのデータ保存方式

ストレージの種類と選択

PACSのデータ保存には、さまざまなストレージ技術が利用されます。代表的なストレージには、以下のものがあります:

  • HDD(ハードディスクドライブ): 容量が大きく、コストパフォーマンスに優れたストレージ。
  • SSD(ソリッドステートドライブ): 高速なアクセス速度が特徴で、迅速なデータ処理が可能。
  • NAS(ネットワークアタッチドストレージ): ネットワークを介して複数のデバイスからアクセスできるストレージ。

RAID技術でのデータ保護

RAID(Redundant Array of Independent Disks)技術は、複数のディスクを組み合わせてデータの冗長性信頼性を確保する方法です。RAIDは、ディスク故障時のデータ損失を防ぎ、PACSの安定運用を支えます。RAIDの種類に応じて、冗長性やデータ処理性能が異なるため、システムの要件に応じたRAIDレベルを選定することが重要です。

医療画像データの圧縮方式

医療画像データの保存では、「可逆圧縮」と「非可逆圧縮」の2つの圧縮方式が利用されます。それぞれの特徴を理解し、用途に応じて適切な圧縮方式を選択することが重要です。

可逆圧縮

可逆圧縮は、圧縮・展開後のデータが元のデータと完全に一致する圧縮方式です。医療画像において、診断に重要な微細な情報を保持する必要がある場合に使用されます。例えば、乳がんのマンモグラフィー検査や、骨折の詳細な診断を必要とするX線画像などでは、画質の劣化が許されないため、可逆圧縮が選択されます。圧縮率は非可逆圧縮と比べて低くなりますが、診断精度を維持する必要がある場合には必須の選択肢となります。

非可逆圧縮

非可逆圧縮は、データを圧縮する際に一部の情報を削除することで、より高い圧縮率を実現する方式です。この方式は、画質の若干の劣化は許容できる場合に使用されます。例えば、経過観察用の画像や、診断後の参照用画像など、完全な画質が必須ではない場合に適しています。ストレージ容量の効率的な利用や、ネットワークを介した画像転送の高速化に貢献しますが、医療診断における重要な細部が失われる可能性があるため、使用する際は慎重な判断が必要です。

使い分けの指針

可逆圧縮の適用場面として、初診時の診断画像、手術計画に使用する画像、病理診断用の高精細画像、法的証拠として保管が必要な画像などが挙げられます。一方、非可逆圧縮は過去の診療記録としての保管、診断確定後の参照用画像、医療従事者間での情報共有用画像、教育・研修用の画像資料などに適しています。

医療機関は、画像の用途や重要度に応じて適切な圧縮方式を選択し、診断精度の維持とストレージの効率的な利用のバランスを取ることが求められます。

データセキュリティの確保

セキュリティ対策の重要性

PACSは、患者情報を扱うため、セキュリティ対策が不可欠です。データ漏洩や不正アクセスを防ぐためには、適切なセキュリティポリシーを導入し、システム全体のセキュリティレベルを維持することが求められます。

アクセス権限の管理

PACSへのアクセス権限は、ユーザーごとに適切なレベルで設定する必要があります。医師は診断に必要な権限を持ち、事務職員はデータ管理に関わる権限を持つなど、役割ごとにアクセスを制限することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを減らします。

暗号化技術の活用

データの暗号化は、PACSのセキュリティを強化するための重要な技術です。暗号化されたデータは、保存時やネットワークを通じた転送時にも解読が難しくなり、不正アクセスから保護されます。これにより、医療機関は、データの安全性を高めながら、安心してPACSを運用できます。

PACS導入で得られるメリット

業務効率化の実現

PACSを導入することで、医療現場の業務効率化が大きく進みます。デジタル画像をデータベースで管理するため、画像検索や共有が迅速に行え、業務の負担が軽減されます。さらに、過去の画像データに容易にアクセスできることで、診断や治療計画の質が向上します。

ヒューマンエラーの削減

PACSは、ヒューマンエラーのリスクを低減します。フィルムベースの管理では、画像の紛失や誤って別の画像を利用するリスクがありましたが、PACSではデータが電子化されるため、画像データの管理が正確になり、エラー発生の可能性が大幅に減少します。

地域医療への貢献

PACSは、地域医療の向上にも大きく寄与します。画像データを病院間で容易に共有できるため、遠隔診療やセカンドオピニオンの提供が促進され、地方の患者も都市部の専門医の診断を受けることが可能になります。これにより、地域医療の質が向上し、患者にとってより良い医療サービスが提供されます。

まとめと将来展望

PACSの将来性と進化

PACSは、医療現場における画像データ管理の中核として、今後も進化し続けるでしょう。特に、人工知能(AI)技術の進展により、画像診断の自動化や精度向上が期待され、医療従事者の負担軽減や診断精度の向上につながります。

業界の最新動向

PACS業界では、常に新しい技術やサービスが登場しており、最新の動向を把握することが重要です。例えば、AIやクラウド技術を組み合わせた次世代のPACSソリューションが登場しており、これらを活用することで、医療現場での効率性と精度がさらに向上することが期待されます。PACS導入を検討する際には、ベンダーとの連携導入後のサポート体制も考慮することが必要です。


PACSの導入は、医療現場における業務効率化やヒューマンエラーの削減、地域医療の向上に大きく貢献します。最新技術を活用しつつ、セキュリティ対策や最適なストレージ選択を行うことで、医療機関はPACSの恩恵を最大限に享受できるでしょう。