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DICOM規格とは – 医療データの標準規格を理解しよう

公開日:2024/10/15

DICOM規格の基本

DICOMの歴史と背景

DICOM規格は、医療画像や関連情報の標準化されたフォーマットとして、医療分野において重要な役割を果たしています。1980年代後半に、医療画像のデジタル化が進展する中で、異なるメーカーの医療機器間でのデータ互換性の問題が顕在化しました。この課題を解決するために、米国放射線学会(ACR)と米国電気電子学会(IEEE)が共同で、医療画像の標準規格であるDICOM(DigitalImaging and Communications inMedicine)を開発しました。DICOM規格は、医療画像データの構造、データ要素、通信プロトコルなどを定義することで、医療機器間の互換性を確保し、医療情報の効率的な共有を可能にしました。

基本概念と構成要素

DICOM規格は、医療画像データの構造と通信プロトコルを定義した標準規格です。DICOMデータは、画像データだけでなく、患者情報、検査情報、機器情報など、医療画像に関するさまざまな情報を包含しています。DICOM規格は、これらの情報を体系的に管理するためのデータ要素を定義し、データ交換の際に必要な通信プロトコルを規定しています。DICOMデータは、ファイル形式として保存される場合と、ネットワークを通じて送信される場合があります。DICOM規格は、これらのデータの保存形式と通信方法を標準化することで、医療機器間の互換性を確保しています。

標準フォーマットとデータ交換

DICOM規格は、医療画像データの標準フォーマットを定義しています。DICOMデータは、タグと呼ばれる識別子と、それに対応する値のペアで構成されています。タグは、データ要素の種類や意味を表し、値はデータ要素の具体的な内容を表します。DICOM規格は、タグの種類や値の範囲を定義することで、データの解釈を統一しています。DICOMデータは、ファイル形式として保存される場合と、ネットワークを通じて送信される場合があります。DICOM規格は、これらのデータの保存形式と通信方法を標準化することで、医療機器間の互換性を確保しています。DICOMデータの交換は、DICOM規格で定義された通信プロトコルに従って行われます。DICOM規格は、データ交換の際に必要な通信プロトコルを規定することで、データの安全な転送と受信を保証しています。

DICOMのサービスクラス

画像ストレージサービス

画像ストレージサービスは、DICOM規格で定義されたサービスの一つで、医療画像データを保存するためのサービスです。画像ストレージサービスは、DICOMデータの保存、検索、取得、削除などの機能を提供します。画像ストレージサービスは、医療画像データを安全に管理し、必要な時に迅速にアクセスできるようにするための重要な役割を果たしています。

クエリ/取得サービス

クエリ/取得サービスは、DICOM規格で定義されたサービスの一つで、医療画像データの検索と取得を行うためのサービスです。クエリ/取得サービスは、患者情報、検査情報、画像情報などの条件に基づいて、DICOMデータを検索し、取得することができます。クエリ/取得サービスは、医療画像データの効率的な検索と取得を可能にすることで、医療現場のワークフローを改善する役割を果たしています。

モダリティ作業リストサービス

モダリティ作業リストサービスは、DICOM規格で定義されたサービスの一つで、医療機器の作業リストを管理するためのサービスです。モダリティ作業リストサービスは、医療機器の作業リストの作成、更新、削除などの機能を提供します。モダリティ作業リストサービスは、医療機器の作業を効率的に管理し、作業の漏れや重複を防ぐ役割を果たしています。

DICOM規格の利用例

放射線科での活用

DICOM規格は、放射線科での医療画像の管理や共有に広く利用されています。放射線科では、CT、MRI、X線などの医療機器から取得した画像データをDICOM規格で保存し、PACS(PictureArchiving and CommunicationSystem)と呼ばれるシステムで管理しています。PACSは、DICOM規格に対応したシステムであり、医療画像データの保存、検索、表示、共有などの機能を提供します。放射線科医は、PACSを通じて、患者さんの医療画像データを効率的に閲覧し、診断を行うことができます。

病院情報システム(HIS)との連携

DICOM規格は、病院情報システム(HIS)との連携にも利用されています。HISは、患者情報、診療情報、会計情報などを管理するシステムです。DICOM規格は、HISと医療機器間のデータ交換を可能にすることで、医療情報の統合的な管理を支援しています。例えば、HISから患者情報や検査情報を取得し、医療機器に送信することで、検査の効率化を図ることができます。また、医療機器から取得した画像データをHISに送信することで、患者情報の統合的な管理を可能にすることができます。

医療機器の互換性

DICOM規格は、さまざまな医療機器間の互換性を確保する役割を果たしています。DICOM規格は、医療画像データの構造、データ要素、通信プロトコルなどを定義することで、異なるメーカーの医療機器間でのデータ交換を可能にしています。例えば、CT装置で取得した画像データをMRI装置で閲覧したり、X線装置で取得した画像データをPACSに保存したりすることができます。DICOM規格は、医療機器間の互換性を確保することで、医療現場のワークフローを改善し、医療情報の共有を促進しています。

DICOMの利点と課題

DICOMの利点

DICOM規格は、医療画像データの標準化によって、医療現場に多くの利点をもたらしています。DICOM規格の主な利点は、以下のとおりです。

*医療機器間の互換性:DICOM規格は、異なるメーカーの医療機器間でのデータ交換を可能にすることで、医療現場のワークフローを改善し、医療情報の共有を促進しています。

*データの標準化:DICOM規格は、医療画像データの構造、データ要素、通信プロトコルなどを定義することで、データの解釈を統一し、データの誤りを防いでいます。

*データの安全性: DICOM規格は、データ交換の際に必要な通信プロトコルを規定することで、データの安全な転送と受信を保証しています。

*データの効率的な管理: DICOM規格は、医療画像データの保存、検索、表示、共有などの機能を提供することで、データの効率的な管理を支援しています。

*医療情報の統合: DICOM規格は、HISなどの他のシステムとの連携を可能にすることで、医療情報の統合的な管理を支援しています。

技術的な課題

DICOM規格は、医療画像データの標準化に大きく貢献していますが、技術的な課題も存在します。DICOM規格は、複雑な仕様を持つため、実装や運用が難しい場合があります。また、DICOM規格は、常に進化しており、新しいバージョンがリリースされるたびに、対応する必要があります。さらに、DICOM規格は、医療画像データの標準化に特化しており、他の医療データの標準化には対応していません。

運用上の課題

DICOM規格の運用面では、以下の課題が挙げられます。

* データのセキュリティ:DICOM規格は、データの安全な転送と受信を保証していますが、データのセキュリティ対策は、常に進化するサイバー攻撃に対応する必要があります。

*データのプライバシー:DICOM規格は、患者情報のプライバシー保護を重視していますが、データのプライバシー保護に関する法律や規制は、国や地域によって異なるため、対応が複雑になる場合があります。

*データの互換性:DICOM規格は、さまざまな医療機器間の互換性を確保していますが、古い医療機器や、DICOM規格に対応していない医療機器との互換性確保は、課題となります。

*データの管理: DICOM規格は、医療画像データの効率的な管理を支援していますが、大量のデータを効率的に管理するには、適切なシステムや運用体制が必要です。

まとめ

DICOM規格の重要性

DICOM規格は、医療画像データの標準化によって、医療現場に多くの利点をもたらしています。DICOM規格は、医療機器間の互換性を確保し、データの標準化、安全性、効率的な管理、医療情報の統合を促進することで、医療の質向上に貢献しています。

今後の展望

DICOM規格は、今後も医療分野における重要な役割を果たしていくことが期待されています。DICOM規格は、常に進化しており、新しい技術やニーズに対応するために、今後も改善が続けられるでしょう。例えば、DICOM規格は、3D画像や4D画像などの新しい画像形式に対応するために、拡張が検討されています。また、DICOM規格は、人工知能(AI)やビッグデータなどの新しい技術との連携を強化することで、医療の質向上に貢献していくことが期待されています。DICOM規格は、医療分野におけるデータ標準化の基盤として、今後も発展を続け、医療の革新に貢献していくことが期待されます。